ディスクブレーキとドラムブレーキ
古くは、ドラムブレーキが主流で、作動も機械式(ワイヤー、ロッド)でした。 その後、レースの世界での高速化と設計自由度の高さから油圧ディスクブレーキタイプが開発され使用が広がると、ディスクブレーキ=高性能との認識が高まり、市販車の高速化と高商品化により徐々に一般化し現在に至っています。 今では、車輛のコストと共にその使用状況に合わせてディスクブレーキとドラムブレーキが使われています。
制動力とコントロール性の向上を目指し、更に環境にも配慮しつつブレーキは進化してきました。
キャリパー性能の向上
ドラムブレーキからディスクブレーキに進化し普及して来た後、更に高速時代に対応する為、パッド面積の拡大が行なわれました。 その性能を引き出す為、従来のパッドを中心部1点で押す物から、加熱により歪みが出る端部分への入力が逃げない様に均等に2ヵ所で押さえる片側2ピストン式に変わり、更にブレーキ操作時のダイレクト感の向上を目指し、裏と表の両方からパッドを押す対向ピストン式に進化して来ました。 ローターの径拡大と共に容量のUPが図られています。
車輛の重量増、高速化に対し、制動力強化の為に拡大するパッド面積を有効に使う。
ディスクブレーキとドラムブレーキのメリット、デメリット
メリット | ①その形状により放熱性が高く、またセルフクリーニング性も高い為ブレーキ 性能を安定して発揮させ易い。 ②システム自体を同サイズの他のブレーキと比べ軽量化できる。 ③油圧式の場合、定期的な遊びの調整作業からは解放される。 |
デメリット | ①ローターを挟むパッドの削り粉(ブレーキダスト)がホイール、キャリパー等に付着し汚れる。 ②ローター、キャリパー共に外に出ているので、天候・気候状況に性能が影響を受け易い。 |
メリット | ①ハブを含めたコストが安い。 ②同サイズのディスクタイプより制動面を多く出来、制動力自体は強力。 ③カバーされている内側なので、天候等に制動力を左右されにくい。 |
デメリット | ①ディスクタイプに比べ重量面など不利な場合が多い。 ②構造上外気での冷却が受け難く温度上昇後の降下が遅く、温度の上昇は性能の低下につながり易い。 ③制動力は強力だがコントロールがし辛い為、重量車以外の車輛で制動の中心としてのフロント部での使用は難しい。 |
等々特徴が有り、それぞれのシステムは使用用途によって組み合わせて使われています。
ディスクローター
ディスクブレーキシステムは、タイヤと同じ回転をする金属で出来ているディスク(円盤)をパッドで挟み減速するシステムで、そのディスクをディスクローターと言います。
1枚のディスクをパッドで挟むタイプ(ディスクタイプ)と、2枚のディスクを合わせて、その間に冷却を行なう為の空気の通り道を確保しているタイプがベンチレーテッドディスクと言い、より高負荷に耐えられるタイプです。
素材としてはダグタイル鋳鉄やねずみ鋳鉄などが有り、形状もソリッドタイプ、ホールタイプ、スリットタイプが使用状況に合わせて使われております。
ブレーキローターも使用距離に従って、パッドによって削られ摩耗して行きます。そのまま放置しておくと、
- 削れた分、ブレーキパッドを多く押さなければならないのでブレーキペダルを踏んだ時の踏み代が多くなり、イザと言う時に怖い思いをする。
- 摩耗してレコード盤(レコードを見た事が無い人が居たりして!?)状になるとブレーキを踏んだ時キィーキィー音がする。 また、新品のパッドを組みつけてもローターに触れる面積が少ない為、パッドの性能を発揮させられない。
- ローター摩耗とパッド摩耗の相乗効果で、最悪パッドの落下となる場合があり、走行不能となる(ブレーキが無いのと同じ)。
パッド交換2回に1回であれば、形状によってはディスクローターの表面を元に戻す事がローター研摩作業によって可能です。
次は交換しましょう。
ブレーキフルード
ドライバーの意思で踏むブレーキペダルとキャリパーを繋ぐ働きをするのがブレーキフルードです。
作動油としての作用が主なもので、一般的なオイル(エンジンオイル、ギヤオイル)とは違います。
ブレーキフルードも耐熱性能によってDOT(ドット)規格グレードが有り、それぞれ長所短所があります。
規格 | ドライ沸点 | ウェット沸点 | 特徴 |
---|---|---|---|
DOT3 | 205℃以上 | 140℃以上 | 一般的に使用される規格。 吸湿性が低く、ロングライフに向く。 但し耐熱性は他に劣る。 |
DOT4 | 230℃以上 | 155℃以上 | 高性能市販車の採用が増えてきた。 一般的に使用出来る高性能タイプ。 |
DOT5 | 260℃以上 | 180℃以上 | 最も高温に対して優れた特性を持つタイプ。 吸湿性が高く長期間の使用には不向き。 競技用と考える物。 |
このフルードは水分を吸収しやすい特性を持ち、性能の劣化が進み易く、更にキャリパー部の熱を受けながら働いていますが、フルードの循環が悪くキャリパー部で熱を受けているフルードは熱を受け続ける為、更に劣化が進む事になります。
ブレーキフルードは、走行距離だけでなく使用期間によって交換サイクルを考えましょう。長期間使用し続けていると、ブレーキを掛け加熱した場合フルードに混入している水分が沸騰し気泡を発生させた場合、ブレーキを踏んでいる力(強さ)がパッドに伝わらず(気泡が潰れるだけ!!)・・・止まりません。 これがベーパーロック現象です。
ブレーキフルードは2年毎の交換を基本としましょう。
※筆者は第三京浜で経験し渋滞の列に突撃しました。